スーザン・ソンタグについての駄文

 先日実家に帰省した折に、津波に襲われた納屋の中に積んでいたダンボールから、泥だらけになったスーザン・ソンタグ著作の「反解釈」を見つけました。購入日付は、「昭和46年6月20日」と記入してありました。当時、この本を読んで「文学の高貴性」というものを感じた覚えがあったことを思い出しました。何となく記憶に残る著者名でありました。

 一昨年の「週間文春11月5日号」の文春図書館にスーザン・ソンタグの最後の著作「同じ時のなかで」に関する、江南亜美子氏による書評を偶然目にしました。そこで、ソンタグ氏は2004年に71歳で逝去されていたことを知りました。

 江南氏は、その書評の中で、「無名だった33歳のソンタグは、1966年、評論集「反解釈」(とその美貌)によって一躍世間に名をしらしめた。」と書いています。まさしくデビュー作は衝撃的で、帯にある写真のソンタグの表情は知的で、魅力的な女性に写っています。

 早速、東京駅前にある丸善に買いに行きました。オアゾにある丸善は広いです。パソコンで棚の位置を確認し、指定の棚を目を凝らして「同じ時のなかで」を探しました。途中で面倒になり、女性店員に訊ねました。そしたら何と、その女性はピンポイントで探していた本を中(あ)て筆者の手元に届けてくれたのです。

 書評を書いた江南氏の感性の鋭さを感じつつ、女性店員の鋭さにもびっくりしたものでした。

 以来、他の本はどんどん読み終わっているのですが、「同じ時のなかで」だけは中々読み進まないままです。筆者にとっては、不思議な本のひとつなのです。