東電のこと。

 7,8年位前に「電力ビッグバン」が日本で論議されたことがあります。当時はマスコミでも大々的に取り上げられたテーマです。もし電力業界に外資の参入を許したら、例えば東電の場合、大収入源の都市部は外資に握られ過疎地ばかりが東電の収入源になるのではないか、と東電も強い危機感を持っていました。外資を迎え撃つためにはこれまでの殿様商売的な体質を改め、合理的な経営体質に転換していかなければならない、と経営者(と労働組合)の意識改革を求める志のあるトップと中堅社員は東電内にもいたのです。

 その当時、米国ロサンジェルス周辺で起きた大規模な停電事故が、電力ビッグバンを吹き飛ばしてしまいました。電力事業を発電、送電、配電事業と分割民営化している米国の電力業界の経営は、厳しい競争に晒され、この事故が起きた原因は「満足のいくメンテナンスが行われなかった結果」とされたのです。もはや米国電力資本の日本参入への芽は消え、何時しか「電力ビッグバン」の言葉も日本のマスコミから忽然と消えたのでした。今思えばあの時の危機意識の芽生えた時期が、東電の体質改善の唯一のチャンスだったような気がします。

 今回の、3.11の事故はまさに想定外でした。フクイチの事故の後も、米国やフランスで原発事故は起こっているのですが、それぞれの政府の対応が適切で(世間で大騒ぎする前に問題を解決してしまったという意味で)、世間の目には今では何事もなかった如くで、世界的規模で福島の件ばかりが未だに尾を引いて話題になっています。

 よくドイツのエネルギー事情が話題になります。確かにドイツは原発の新たな建設はストップしましたが、クリーンエネルギーだけではドイツ国内の電力需要に追いつかず、結局周辺諸国から原発で作られた電気を買っているのが実情です。これってどう説明すれば好いのでしょうか。自前ではドイツはクリーンを装っていますが、陸続きのヨーロッパで隣のフランスやポーランド原発事故が起これば、海に囲まれた日本所ではないはずです。ドイツの「緑の党」の運動も、結局「自分さえ良ければ」の意図を感じてしまいます。

 電力事業(東電)の国有化が本質的な問題の解決にはならない気がします。長い期間蓄積した電力事業のノウハウを持たない経済産業省の役人が、東電をコントロールしようとしても、チンプンカンプンな意思決定(これは意思決定とは言わない)をするのが関の山です。それにしても、何故西澤社長に代表権を持たせないのか事情が呑み込めません。もしかしたら東電の癌は今でも院政を敷く勝俣氏にあるのではないでしょうか。彼を切らない限り東電の将来はない、とは心ある人間なら誰でも思うことのような気がします。伏魔殿の東電の内容について1国民がコメントすることは、これが限界?なのでしょうか。